奴のとなり
見られてたら、
「何で泣いてる」
、なんて理由を聞くまで話してくれない。
空いてる手で拭い、
口元に笑みを浮かべる。
笑ってないとって思ったから。
連れて行かれた先には
2階建ての家っぽいところ。
でも暖簾がかかってて、
そこには
『らーめん くろちゃん』
って書かれてある。
らーめん。
すっかり頭から飛んでた。
奴は止まることも、
話すこともなく、中に入っていく。
カウンターの中には一人の女の人が居て、
「いらっしゃい」
って明るくて大きな声が聴こえる。
手を少しあげて、階段を上っていく。
えっ!!
いいの!?
勝手に上に行っちゃって。
人んちだよ??
なんて言う暇もない。
奴は階段をあがり、
4つある襖の一つを開けた。
勝手に。