奴のとなり
「かずちゃん遅くなったねー!!
ゆっくりしてきなぁ!!」
元気で、家中に響きそうな声。
静か過ぎた空間に、爆弾のような声。
思わず体がびくりと跳ねた。
さっきのおばさんだ。
くりくりと大きな目を
らんらんと輝かせて、
大きな口で笑う。
太陽みたいな、
向日葵みたいな人。
おばさんは
あたしをまじまじと見つめ、
にっこり笑うと
「かずちゃんのコレかい?
かずちゃんもやるねぇ!!」
、と大きな目を糸みたいに細めて笑った。
おばさんの小指は完全に立ってて、少し古い。
奴は
「うっせ」
、とイラついたように吐き捨てると、
おばさんから視線を逸らした。
このおばさんにかかると、
一樹桃矢も子ども扱いで、
奴は苦手に思ってるみたい。
そんな気分でもないくせに、少し笑える。