奴のとなり
「どうした?」
奴はもう一度ゆっくりと問いかける。
今はそんな少し優しい声聞きたくない。
今口を開くと何が出るか自分でもわかんない。
何も答えないあたしに、
ゆっくりと近づき、そっと頬に触れる。
温かい奴の手が触れた。
ただそれだけで、鼻の奥がツンとする。
何もかも吐き出せたら
楽になれるって分かってるけど、
自分でも何が出るか分からなくて、
下手に口を開けない。
奴の綺麗な目に、
酷い顔したあたしが映ってる。
こんな顔を奴に見せたいわけじゃないのに。
我慢できなくなって、あたしは手を振り払った。
襖に向けて走る。