奴のとなり
ここから逃げなくちゃ!!
とにかくここじゃないどこかに行かなくちゃ。
奴がいないどこかに。
飛び出す後ろから、
「桜っ!!」
って奴の大きな声が聴こえた。
ごめんね、
聴こえてるよ、きちんと届いてる。
でも、今はダメなの。
なんかダメなの。
階段を駆けるように降りて、
店のドアを開いて外に出る。
おばさんの声も聴こえた。
でも振り返れなかった。
駆けに駆けて、
心臓が限界になったとき、
あたしはやっと足を止めた。
心臓が壊れそう。
こんなに走ったのきっと初めてだ。
奴から離れたからか、
時間が経つと落ち着いてきて、
自分が置かれた状況を考えれるようになった。