奴のとなり
「ねぇ」
あたしの声に、
奴は漫画を読む手を止める。
それから、
漫画を置くと、
奴は胡坐のまま、
あたしの方に体ごと向ける。
「どうした」
「うん」
何から話して良いか分からなくなって、
聞きたいことが沢山ありすぎて
口篭ってしまう。
「桜、ゆっくりでいい」
いつも冷たいくせに、
こんなときはしっかり優しい。
それがまた負けた気持ちになって悔しい。
「あのね。
一樹桃矢はすっきりかもなんだけど、
あたしだけ何も解決してないの」
「あぁ」
「このままだと、引きずっちゃう」
「そうか」
「でも何がって言われると
難しいんだけど・・・」