奴のとなり
「うわぁー初めて近くで見たー」
なんて本人を目の前に感動される。
やっぱり変に有名人らしい。
「俺、黒田恵」
手を差し出され、
こちらも思わず手を差し出してしまった。
「ケイちゃんって呼んでなぁ!」
と手を握られぶんぶん振り回される。
手がもげる・・・。
それにしても、
なんの用事なんだろう。
彼は可愛い顔をにやっと歪めると,
携帯で誰かと話し始めた。
訳がわからないけど、
手は握られたまま。
なんとか離そうと試みるものの、
力が強すぎて無理だった。
彼はぐいっとあたしを隣の教室に押し込むと、
ドアの傍でしーっと指を口に当てた。
訳なんて分からないままにも,
言うことを聞くしかなさそう。