奴のとなり
心なしか心が軽い。
結局なんだって言われると
わからないけど、
逃げ出したときとは
比べ物にならない気持ち。
奴は小さく鼻歌を唄ってる。
隣に座るケイちゃんに目を向けると、
ケイちゃんは大きな目をくりくりさせて、
穴が開くほど奴を見てる。
「ケイちゃん?」
「・・・」
「おーい!」
「・・・」
「こらっ、イガ坊主!!」
「へっ!?」
やっと気がついたみたいに、
きょろきょろ首を動かすと、両手で顔を覆う。
それから、手を下ろし、あたしを見る。