奴のとなり
「ケイちゃん、ありがとっ!!」
沈んでいた気持ちが浮上して、
それと同時にあたしは
ケイちゃんに抱きついていた。
ケイちゃんは
しどろもどろになりながら、
体を強張らせる。
口をパクパクさせて、金魚みたい。
「ぷっ。変な顔」
「うっさい」
顔を真っ赤にさせながら、
怒っても可愛いだけなのにね。
ケイちゃんはポストよりも真っ赤になって、
ぶつぶつ文句を吐き出す。
ケイちゃんから離れて、
立ち上がり、膝を払う。
「というわけで、
今から一樹桃矢と会って来ます!!」
「へぇへえ」
「じゃね!」
あたしは足取り軽く、
階段を下りた。
おばさんに声を掛けると、
おばさんは仕事の手を止めて、
あたしに歩み寄る。