奴のとなり
痺れを切らして、
「あのね!!」
って思っても見ない大きさの声が
自分から発せられたと分かったときは
消えたいほど恥ずかしい。
「なんだよ」
奴の声は低い。
その低い声が
あたしのほんの小さな勇気を奪ってるって、
奴は気づいてるんだろうか。
うん、
気づいてたらもっと
素敵な声を出すに違いない。
あたしの好きな暖かくて優しい声。
手をぎゅっと膝の上で握る。
少し湿った掌は緊張してる。
「あたしも今までのと一緒なの?」
「・・・、今まで?」
「うん、
今まで一樹桃矢の傍にいた女の子達」
「あぁ」
「そっか・・・。
まぁ、始まりがあんなだったし、
言い訳するつもりも無いけどさ、
それでも、何か違うって思ってたのはあたしだけ?」