奴のとなり
あたしにとって
‘初めて’は全部、奴。
でもあたしは一樹桃矢の何か初めてを
してあげられるんだろうかって思ってた。
なのに、一番最初に惚れてもらえた。
奴の中の、
初めての人を好きになるって感情をもらえた。
「よかった、初めてをあげられて」
素直に口に出てた。
素直になれない、
あたしからしたら、すんごいこと。
奴はあたしの言葉に少し、
いや、かなり驚いて、目を丸くする。
それから、ぎゅっと抱きしめると、
あたしの肩に顔を擡げた。
それきり何も言わないから、
てっきり寝てしまったのかとあたふたする。
だって・・・、どうしたらいいんだろ。
起こすのも可哀相だし、
でもこの体勢はかなりキツイ。