奴のとなり



あたしは奴の背中を叩くと、


「本気で悩んでるのに」


って怒りの声を呟く。



奴の鼻息を耳に感じて、
また笑われたんだって思う。



ほんと、こいつだけは。



背中の薄い皮を抓む。



「いでっ」



苦い唸り声を出して、もがく。



ぷぷっ



いい気味。



奴はあたしを睨みつけると、


「いい度胸じゃねぇか」


って低い声を出した。



どうやら、
こんなに甘い雰囲気のときでも
奴には関係ないらしい。



やっぱり一樹桃矢は一樹桃矢で、
いつでもマイペースな王様らしい。



あたしは目をぎゅっと瞑り、
敵の攻撃に備えた。










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