奴のとなり



さっきまでの熱の篭った遣り取りは、そういう雰囲気だったよね。



それとも、そういう風に感じ取っていたのはあたしだけなんだろうか。



あれはもしかしたら普通の恋人同士にとっては普通のことで、こんな風になるあたしがい
けないのかもしれない。



でも、普通ってなんなんだろ。



普通を知らないあたしが、普通を知ろうとしても無理な話で、分かるわけがない。



あたしは首を傾げて奴の様子を伺う。



奴はあたしの目を見ようとしないで、ただどこかを見ていた。



それがもどかしくて、それでも何も出来ないで俯く。



何か余計なことをしたとか?



あたしなら有り得る。










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