奴のとなり



慌てて頭を上げてもらい、あたしと彼女はそれぞれの物を注文する。



飲み物と軽食が運ばれてきて、あたしたちは口に運び、少し気まずい雰囲気が漂った。



よく考えてみれば、あたしはまだこの人のことを何にも知らないし、どういう関係の人か
も分からないんだった。



何かを話そうとしても、きっかけになる話がない。



彼女はストローから口を離し、あたしを見る。



「あっ、自己紹介もせずにごめんなさい!!私、如月美香っていいます。
知らないと思いますけど、同じ学校で同じ学年なんですよ」



そう笑う彼女の口元に小さな八重歯が光る。



可愛い。



ぱっと見ると綺麗系の人なんだけど、笑うと印象の変わる人。



それに、知らない人のはずなのに、顔は見覚えないんだけど、名前はどこかで聞いた気が・・・。



思い出せない。










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