奴のとなり
ここまでは電車で来たけど、あたしは電車で帰るお金が残っていなかった。
弾んでた気持ちが、一瞬でしぼんだ。
途方に暮れてると、後ろからあたしを呼ぶ声が聴こえた。
「桜ちゃんー!」
振り返ると、サツキさんが手招いていて、あたしは駆け寄る。
サツキさんは駆け寄るあたしを目を細めながら見守って、すぐ傍まで来ると頭を一撫でした。
「なんか、ワンコみたいな子ね。可愛いー」
少し語尾を延ばしながら、ふふふっと笑う。
「どうしたんですか?忘れ物とか・・・?」
「やだ、違うのー。あたし、もう仕事上がりで帰るところなんだけど、よかったら桜ちゃんとドライブがてら帰ろうと思ってねー」
そう言われると、手には沢山の荷物があって、さっきと比べるとコートも着てる。