奴のとなり
気づけば、
さっきからあたしの歩く速度に
合わせてくれているようだった。
いや、歩く速度は普通なんだけど、
時々立ち止まってあたしを待ってくれてる。
隣まで駆け寄ると、彼の顔を見上げた。
「ねぇ、そう言えばあたしの名前がどうかしたの?」
「いつの話だよ」
鼻で笑われた・・・。
あんたのせいでしょっと腹が立って、
奴の鼻を思いっきり掴む。
もちろん、この身長差。
飛び跳ねて、勢いで摘む。
彼は声にならない悲鳴をあげると、
赤くなった鼻を擦りながら恨めしそうに文句を垂れ流す。
観念したように、1つ溜息を吐くと、あたしと目を合わせずに話し出した。