奴のとなり
ナナミさんは目をくりくりさせて、
「可愛いね」
って目を細めてくれた。
多分お世辞。
ありがとうナナミさん。
奴はというと、あたしを見てから視線を逸らして、それからあたしと目も合わせてもらえない。
そりゃお化粧とか取りたかったけど、時間無かったんだもん。
それから沈黙。
あたしと奴は後部座席で、ナナミさんは運転。
なんか折角気合入れすぎてもらったのに、悲しくなってきた。
カゲってとこに行くのかと思いきや、着いた場所はケイちゃんちだった。
“らーめん くろちゃん”
暖簾のかかった扉を開けると、おばさんが出迎えてくれた。