奴のとなり
奴にとって、重要なポジションにあるってことは分かった。
名前を呼ぶことを許されるって、喜ばれるって何か嬉しいかも。
あたしは躊躇うことなく、奴を見つめた。
さっきまでの目を合わせにくい雰囲気はもう無くて、あたしはきっと菩薩のような目になってると思えるぐらい、心は穏やかで、幸せに包まれてた。
よくよく思い出してみると、桃矢って名前を呼んでる人に会ったことない。
彼女じゃない人達ですら、一樹って呼んでた。
ここまで来て、あたしは後悔の念に捕らわれる。
何で今まで呼ばなかったんだろ。
その特権を与えられてたのに・・・。