奴のとなり



「あらっ、あなたが桃矢くん?色男ねぇ~」



サツキさんはぐるりと奴の周りを回ると、色んな角度から眺めてほおっと感嘆の溜息を吐き出す。



どうやら、気に入ったうえに、サツキさんの創作意欲が湧いたらしい。



それから、奴の後ろに目が行ったようで、ソファーで煙草を吸ってるナナミさんに気づく。



それから、ぶるっと体を震わせると、


「きゃーーーーーーっ」


っと奇声を上げた。



あたしの腕をがしりと掴み、バックヤードに連れ込む。



奴の眉間の皺が深まったのをあたし達は知らない。



目をうるうるさせて、


「もろタイプ」


って甘い吐息と共に呟いた。



そこからのサツキさんは凄くて、あたしは頷くしか出来ない。



ナナミさん・・・、これから大変だよ。



あたしはこれからを想像して、ちょっとナナミさんを不憫に思った。












< 385 / 555 >

この作品をシェア

pagetop