奴のとなり
「あらっ、あなたが桃矢くん?色男ねぇ~」
サツキさんはぐるりと奴の周りを回ると、色んな角度から眺めてほおっと感嘆の溜息を吐き出す。
どうやら、気に入ったうえに、サツキさんの創作意欲が湧いたらしい。
それから、奴の後ろに目が行ったようで、ソファーで煙草を吸ってるナナミさんに気づく。
それから、ぶるっと体を震わせると、
「きゃーーーーーーっ」
っと奇声を上げた。
あたしの腕をがしりと掴み、バックヤードに連れ込む。
奴の眉間の皺が深まったのをあたし達は知らない。
目をうるうるさせて、
「もろタイプ」
って甘い吐息と共に呟いた。
そこからのサツキさんは凄くて、あたしは頷くしか出来ない。
ナナミさん・・・、これから大変だよ。
あたしはこれからを想像して、ちょっとナナミさんを不憫に思った。