奴のとなり
奴の、桃矢さんの手は、ちょくちょくカステラに向かって伸びてきて、きっと好物なんだと思う。
食べてるときの顔がちょっと緩んでるっぽい。
「おいし?」
からかうつもりで訊いてみたら、嫌な顔されて、
「あぁ」
とだけ言われた。
これは可愛くない。
「そうですか」
って、そっぽ向いてやった。
それから流されるように境内まで進み、やっとお賽銭箱まで来た。
あたしは5円玉を入れると、手を合わせる。
終わって、そんな奴を眺めようとしたとき、奴が取った行動に驚いた。