奴のとなり
電車を降りて、奴と少し話しながら夜道を歩いた。
話するって言っても、奴はあたしの話に笑ったり、こっちを向いて聞いていたりするけど、これといって自分から話し出したりしない。
たまに、ごくたまに、ぽつりと自分から話し出して、あたしは思わず頬が緩んだ。
別に苦痛じゃない。
あたしは話好きだし、奴も真剣に聞いてくれてるから。
あたしの家の前に着くと、あたしはお別れを言うべく口を開きかけた。
それよりも先に奴が口を開く。
「来ねぇ?」
うん。
またしても意味不明。
こねぇって何?
聞き返そうとして奴の顔を見るけど、奴は真剣に返答を待ってるみたいで、あたしは聞け
ない雰囲気に呑まれる。