奴のとなり



電車を降りて、奴と少し話しながら夜道を歩いた。



話するって言っても、奴はあたしの話に笑ったり、こっちを向いて聞いていたりするけど、これといって自分から話し出したりしない。



たまに、ごくたまに、ぽつりと自分から話し出して、あたしは思わず頬が緩んだ。



別に苦痛じゃない。



あたしは話好きだし、奴も真剣に聞いてくれてるから。



あたしの家の前に着くと、あたしはお別れを言うべく口を開きかけた。



それよりも先に奴が口を開く。



「来ねぇ?」



うん。



またしても意味不明。



こねぇって何?



聞き返そうとして奴の顔を見るけど、奴は真剣に返答を待ってるみたいで、あたしは聞け
ない雰囲気に呑まれる。













< 398 / 555 >

この作品をシェア

pagetop