奴のとなり
「聞いてなかったろ」
「・・・・・・・・・はい」
「やっぱりな」
「すんません」
またやっちまった。
どうやらこのくそ寒い中、桃矢さんを玄関先で待たせてたらしい。
一応待っててくれたらしい。
何も言わずに。
ちょっと遅いなって思ってたのに、準備に手間取ってるかもと優しさを発揮してくれたらしい。
こねぇ
謎の言葉じゃなくて、“俺んちに来ねぇ”ってことらしい。
きちんと言わない桃矢くんが悪いと思う。
慌てて飛び出ると、少し顔色が蒼くなった桃矢くんがしゃがみこんでいて、あたしは驚い
て持ってきた防寒具を全て巻きつけた。