奴のとなり
左手の小指に触れる。
ひんやりと冷たくて心地いい。
「桜は何も悪くない」
「うん」
「適当に生きてきた代償っつうか…、嫌な感じが拭えねぇつうか」
「うん」
「うまく言えねぇけど」
ゆっくり言葉を探すように紡ぐ。
吸い込まれそうな瞳にあたしが映ってる。
「でもこれだけははっきりしてる。俺は桜を失いたくねぇんだ」
「失う?」
こんなに必要としてるのに?
「あぁ。今さら離せねぇよ」
そう言うと、あたしを力強く引き寄せた。少し早い鼓動があたしに伝わる。
お互いこんなに欲してるのに、何で失う心配をしてるの?
なんで、そんなに切ない声で言うの?
わかんないよ。
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