奴のとなり



「あたしはここにいるよ?」



「あぁ」



何でか泣きたくなった。
きっと桃矢くんの気持ちが、不安が伝染したんだ。



こんなにも胸が苦しいんだもん。



「桜が言ってくれたのは、すげぇ嬉しい。ただ、時間くれねぇか」



「俺ん中でちゃんとするから、待って欲しい。後悔したくねぇんだ」



答える代わりに、抱きしめる手に力を入れた。



伝わったのか、髪に唇が触れる。



「桜」



分かったよ。
あたしが我慢したげる。
大人な桜さんがね。



嫌がられてるんじゃないって分かったから、もやもやはしなくなると思うし。



たまに抱きしめてくれればいい。










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