奴のとなり
「トーヤ!!」
「はい」
「桜はあたしの自慢の娘なんだよ!」
「はい」
「泣かしたりしてみろ。首もいで山に捨てるかんな!!」
管を巻きながら、母は桃矢に絡む。
「気をつけます」
「それにまだ嫁にはやらん!!!」
「でもいつかは貰いに行きますよ?」
「きぃーっ!!」
母にぼかぼか殴られながら、桃矢は澄ました顔をしていた。
母は座り直し、ソファーの上で胡座をかく。
桃矢は缶ビールを少し口にした。
「桃矢。今日はどこで寝るつもりなんだよ」
「桜の隣」
母の眉間に深い溝が刻まれる。
「今日首をもがれたいんか」
「すみません」
そんなやりとりがあったことを、あたしは知らない。
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