奴のとなり



「朝ご飯食べる?」



そう訪ねると、桃矢くんは目を擦りながら、



「ん、食べる」



と、しこたま可愛い声で答えた。



普段のぶっきらぼうさはどこへやら。
可愛いすぎて、一緒に暮らしたいとさえ思ってしまった。
母とあたしと桃矢くん。
結構楽しく暮らせる気がするんだけど…



妄想しながら、あたしはうきうきで2人分用意した。



席に座ってればいいのに、桃矢くんは眠たげにあたしの横に立って観察している。



人に見られながらするのってやりにくいな。



挙動不審になりながらも桃矢くんの目玉焼きを焼いた。



2人…、ソファーにいる母もいれたら3人だけど、ご飯を食べた。



折角トーストの上な乗せたのに、桃矢くんはずるずると上だけを先に食べてからパンを口にした。



まだ起ききってないのか、桃矢くんの心はここに無いみたいで、はむはむとゆっくり静かに食べてた。



やっぱり胸きゅんで、あたしはおもむろに携帯を開く。



ボタンをいくつか押すと、動画録画のボタンを押した。



ピロリン



妙に明るい、この場に不釣り合いな音が響いたけど、気にしない。



これはあたしの宝物になりそう。



寂しいときに見たら癒される気がする。











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