奴のとなり
彼女の指すチャンスってのは分からないけど、とびきりいい事ってのは分かる。
「タイミング悪くてね?私いっつも先越されてたの。でも今回は私しか知らないわけだし、一番乗りだよね」
いくら聞いても一つも分からなくて、あたしは頷くしかなかった。
「一条さんには悪いけどルールだもんね。それに人より長く付き合えたんだからいいよね」
とっても楽しげに話を続けてて、あたしはどうしていいか分からなくなる。
「じゃあ、私一樹の所に行ってくるね」
嬉しそうに手を振りながら、彼女は駆けていった。
よく分からない。
けど、不安が底から沸き上がってきて、あたしは気づけば走り出していた。
彼女にはいいことで、あたしには悪いことが起こる。
話の内容からそれは分かっていて、あたしはとにかく走った。
キサラギさんと同じ目的地へ…。
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