奴のとなり
「なぁ、さくちゃん」
真面目な顔したケイちゃんが、隣に腰掛けるあたしに投げかける。
顔だけ上げると、ケイちゃんは真っ直ぐあたしを見ていて、ちょっと怖い。
「如月美香と知り合いなんか?」
あたしはこくりと小さく頷く。
ケイちゃんは大きな溜め息を吐いた。
「で、あの女妙に詳しかったんやな。さくちゃんも変な見栄張るからあの女が押しかけて来たんやで」
何故か咎めるような口調で、あたしの頭に?が浮かぶ。
「一樹も驚いて固まってるとこにドカーンや。ほんま不可抗力やで?だから、さくちゃんは心配せんでええねん」
よく分からないけど、桃矢くんはあたしから離れて行くわけじゃないらしい。
でも…
うすうすあたしは気づいてた。
こんな風に曖昧なまま受け入れ続けたから、話がややこしくなってたことを。
今までのことだって、お互いきちんと理解してれば変な誤解だって生まれなかったかもしれない。
そりゃ、お互い完璧に理解するってのは無理な話でしたくもない。
別々の人間が一緒に居る意味がない、と思う。
だから、あたしはもう中途半端にしたくなかった。
「妙な見栄って?」
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