奴のとなり



「それは…あれや。さくちゃん、あの女に一樹とヤったっつったんやろ?」




「へ?!」



ほらね。
すでに1つ目の誤解発見。



「そりゃ逆効果。そりゃあの女にとっては嬉しい見栄やったんや」



分からないことだらけだった。



彼女がどう誤解したのか、あたしの言い方が悪かったのかもしれない。



それに逆効果って?



分からない。



「あたし、キサラギさんにそんな事言ってないよ。それに逆効果なの?」



「逆効果も逆効果。あの女はずっとヤるの待ってたんやし」



聞けば聞くほど分からなくて、段々いつの悪い癖、もういいやって諦めが出始めた。



でも、今回はケイちゃんだからなのか、待ってれば答えは勝手に聞こえてくる。



「一樹と長くおる為にはヤらんってことが一番やねん。1回ヤってもたら、はいさいなら〜やからな。やけど、アホ女どもは欲望に負けやすいっつーか」



「で、はいさよなら〜ってなる訳やな。で、次から次へと女が湧いてくんねん」



「タイミング悪く、波に乗れんかったんが如月美香や。それにあいつはしつこいねん」



「一樹もしつこいんとか面倒なんは避けてるとこあったしな」




ケイちゃんの口からは川を流れる水のようにさらさら言葉が流れてくる。



あたしはただ呆気と聞いていた。



途中ケイちゃんは慌てたように付け加えた。



「それはさくちゃんに出会う前の話やで!それにさくちゃんとはヤって終わりちゃうやろし」



ヤって終わり



頭の中に響いた。



もしかして、桃矢くんが整理したいことってこのこのなのかもしれない。



ふとそう思った。



そうなら、ケイちゃんの言う通り、ヤって終わりじゃないのかもしれない。



それはちょっとした未来の約束なのかも。









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