奴のとなり



とにかく余裕がなくて



あたしは保健室を飛び出した



怖い



怖い



頭の中が、つま先から頭のてっぺんまで、得体の知れない黒に浸食される



ドアを開けて一歩踏み出した瞬間、後ろから叫び声が、あたしを呼ぶ声が聞こえた



「桜っ!!」



何度聞きたいと思ったことか



何度会いたいと思ったことか



とにかく走らなきゃ




あたしはふらつきながらも、必死で走る



こんな状態で逃げようなんて考えるのも失敗で、校舎の端まで来たとき腕を掴まれ、そのまま引き寄せられた














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