奴のとなり
「何?」
思いがけず、冷たい声になった自分に驚きながら、桃矢くんを見下ろす
・・・、と視界にお腹を抱えて何かを堪える皐月さんの姿が目に入った
「サツキさん?」
「ぶはっ!!!!!!」
勢いよく噴出すと、ひぃひぃと苦しみ出した
何か・・・笑われてる?
涙をぽろぽろ零しながら皐月さんは笑うと、落ち着いたのか紅茶をぐいっと飲み干し盛大な溜息を吐き出す
「はぁ〜、お腹よじれて死ぬかと思っちゃった」
まだ涙の滲む目で、あたしを見上げる
むちゃくちゃ笑ったせいで皐月さんのふわふわの髪が少し乱れてる
「笑われる意味がわかんない」
「いやね、桜ちゃんが可愛いくてついね」
あたしは何でか腰をもう一度下ろしていて、それを見た皐月さんがもう一度小さく吹き出した
「かずちゃん見て、私たちちょっと距離ができちゃった」
あたしと奴との空間が広がったことに指を指して笑う
あたしはお尻が落ちない程度にギリギリ端っこに座っていた
何だかどうしたらいいかわからなくて
「悪ふざけしすぎ」
桃矢くんは至って冷静で、いつもと変わらずしれっとした顔で遠くを見てる
「だって、桜ちゃん可愛いんだもの」
乱れた髪を撫でつけるように耳に軽くかけると、皐月さんは落ち着いたようにあたしを見た
「なんだかとっても勘違いしてるみたいだけど…、私とかずちゃんはそんな関係じゃないのよ」
「違うの?」
隣からため息が聞こえる
桃矢くんのが
「だったら嬉しいけど、残念ながら」
優しく微笑み、ゆっくりと言葉を続ける
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