奴のとなり



それに薄手の白いコートを羽織る



言われた通りにしてたら髪はくるくる



お化粧もばっちし



なんか…一人意気込んでるみたいで恥ずかしい



初めてのデートでもないのに



鏡を見ながら、思わず真っ赤になる



これで桃矢くんが喜んでくれるならいいんだけど



『これで悩殺作戦は完了ね。あとは言うことはないわ。自信持っていってらっしゃい』



神々しいまでの笑顔を浮かべる小悪魔さんが目に見える



なぜ悩殺作戦をするのか聞かないでいようと思う



時計を確認すると、いい時間で



小悪魔さんにさよならを告げ、玄関へとおりる



ピンポーン



いいタイミング



ドアを開けると桃矢くんがいつものように立っていた



相変わらずシンプルなのにさらっと格好良く着こなしちゃって



こっちはあれやこれやと悩んだって言うのに



少し頬を膨らませながらも、玄関前の石段を降りた



空を見上げて、その空気を楽しむように少し頬を緩める桃矢くんが、あたしの足音に気づいたのかこちらを向いた



「……」



まさかの無反応!!



それなら「何意気込んでんだ」みたいな冷たい返しがいいよ!!!



これ喧嘩か?



喧嘩売られてんのか?



しゃーんなろー!



受けて立ってやんよ



フーフーと威嚇するあたしを残して、桃矢くんは歩き始めた










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