奴のとなり



カラン
優しい音が来客を告げる


「いらっしゃい」



優しい雰囲気、大好きな声



「久しぶり。待ってたよ」



安心できる笑顔を称えたナナミさん



前会ったときと変わらない笑顔



仏様



「…ナナミさん大好き」



思わず口を突いて出た言葉に一瞬固まるナナミさん



それから後ろに目をやり、意地悪そうに笑う



「だってよ、一樹」



……



振り返ると、般若な桃矢くんが怖すぎる笑みを浮かべていて、あたしは見なかったことにした



「いい度胸だ」



低い声が近くで聴こえたけど、空耳だって思いたい



「ナナミさん、ごめんなさい」



「どうした?」



謝られた原因がわからないのか、手にしていた野菜を下に置きながら首を傾げる



「あたし…いっぱい心配かけちゃったから」



あたしの言葉にナナミさんは納得したらしく、



「ほんとにな。心臓に悪いから次からは少しは頼ってくれ」



と表情を崩して笑った



やっぱり大好きナナミさん



無意識に考えたことだけど、口を出なかったのは背後のオーラが黒いからだと思う












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