奴のとなり



「どうしたの?」



同じテーブル席の向かい側に腰掛けると、ケイちゃんに手をぎゅっと握られた



意味がわからない



真剣な顔を崩さないまま、あたしをじっと見る



「ケイちゃん?」



「……さくちゃんに話があんねん」



「うん」



「ほんまに真面目な話や。あんなぁ…」



「…」



握られた手に込められた力が強くて、あたしはちょっと意気込んだ



何にしても、ケイちゃんがこんなに真面目に話するなんて珍しい



明日は大雪かもって思えるくらい



「まずは心得や」



「うん」



「初めてやからって力むんはわかる。せやけど、一樹は慣れっこやからな。どんと任せりゃええ」



「うん?」



「1回目っちゅうんは任せりゃええねん。段々よぉなるわな」



「……」



「あれか?準備は万端なんやろな?赤ちゃん出来ちゃいました〜なんて嬉しいで?せやけど、今タイミングちゃうやろ?俺はさくちゃんが、できちゃった結婚は認めへんからな」



「……」



だよね



ケイちゃんはケイちゃんであって、他の誰でもないよね



真剣に聞こうとしたあたしが馬鹿でした



ケイちゃんはあたしが聞いてようといまいと、ただただ話し続けた



呆れきってたし、なんで今日のこのタイミングでこんな話か全く意味不明だけど



真ん前で話されると嫌でも耳に入る










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