奴のとなり
お互い今までとは違うとわかってる
だけど、ジンクスみたいなものが、今までと同じで別れを引き起こさないか不安になる
お互いが別れる気もないのに
お互いが別れないって強く思っていれば気にもとまらないことなのに
あたしは天井を見上げる桃矢くんの頭をそっと抱きしめた
「あたしは桃矢くんと一緒にいたい。桃矢くんは?」
桃矢くんが腕の中で小さく頷く
「ずーっと?」
「皺皺になっても?」
あたしの夢みたいな妄想にも、桃矢くんは「あぁ」と真面目に返してくれる
ことばにするだけで、相手が笑わないだけで、夢みたいな妄想も現実に近づく
「なら、問題ない。あたしたちは変わらない」
何の抵抗もなしに、さらっと口を突いて出た
「先に言っとくけど、あたし物覚えはいいんだからね。もうナシとか言ってもダメなんだから」
やっと桃矢くんが顔を上げた
気づけば震えはなくなっていて、いつも通りに戻ったみたい
「変な奴だよな」
そう耳元で聞こえたかと思った瞬間、あたしの体はまたベッドに沈んだ
優しいキスの雨
きっと幸せってこんな感じ
近いってこんな感じ
朧気だけど、何か大切なものを掴めたみたい
「桃矢くん、好き」
いつもなら絶対言わないことなのに、自然と口から流れるように洩れた
「知ってる」
奴は変わらないけど
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