奴のとなり



「あたし声かけたの?」



「思いっきり名前呼んだろーがよ」



あぁ。



さっきの、声に出てたんだ。



やっと理解すると、
彼はあたしに興味をなくしたのか
最初の眠るような体勢に戻ってしまった。



「ねぇ」



あたしの声に
一瞬ぴくりと反応するものの、
返事が返ってくることはない。



「なんでそんななのにモテんの?
知りたいから彼女にしてくれない?」



構わず話しかけて、
あたしが考えていたことを口にする。



付き合えば近くで観察できるし、
学べるし一石二鳥じゃん。



我ながら名案だ。



さすが意味不明な提案に彼は顔を上げた。



何か言おうと口を開いたとき、
ガラスのドアが開く。






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