咎人の歌
「……な、んなんだよ……」
まるで、今朝視た夢の続きを見ているかのようだった。
三春と影しか存在しない空間、ただ違っているのは今が紛れもない現実だということ。
それから、影の色だ。
目映いほどの白さを放っていた影が、今は夢を取り囲む闇と同じ果てしない黒一色に染まっている。
その色に引きずり込まれそうな気がして、三春は一歩後退り影を真正面から睨み付けた。
「てめぇ、何しに来た? 夢の続きならお断りだ」
すると黒い影はやれやれといったように肩を竦め…しゅるり、と布が剥がれるかのようにその姿を露にした。
「――随分な嫌われようだなぁ、カレ。まぁ、あの性格じゃあね」
燃えるような、赤い瞳。
影と変わらぬ黒で統一されたゴシックな服装の中で、やけにそれだけが映えている。
「?何のことだよ、カレって」
「君が言い掛かりをつけたい相手は僕じゃないってことさ。
――僕は真紅、宜しくどうぞ」
優しい言葉で繕ってはいるが、黒い影…真紅が三春を見る目はまるで獲物を射抜かんとするように鋭く、冷たい。