咎人の歌
逸らしたくなる視線を負けじと睨み返しながら、三春は噛み付くように口を開いた。
「ならお前は何なんだ? 此処の生徒ってワケじゃないんだろ」
「さぁね、僕は一体何者でしょうか? 取り敢えず君の事は知っているよ、藤咲三春くん」
きっぱりと名を言い当てられた三春は思わずみじろぐ。
「あは、驚いたよね。君は僕のことを知らない筈だ、何せ今日が初対面なんだし」
クスクスと笑い声を響かせながら、真紅は三春の周りを遠慮でもするかのように距離を置いて歩きだす。
その意図を読めないながらも、三春は強気な視線を向けたままその場を動こうとはしない。
「……じゃあお前は何で俺の名前を知ってんだ、ストーカーでもしてたのかよ?」
「心外だなぁ、僕はそんな幼稚なことはしないよ。何事もスマートに済ませたい僕にそぐわないからね」
「スマートねぇ……もう良い。お前は何で、俺の前に現れた?」
途端、足を止めて質問を紡ぐ三春を見遣る真紅がピクリと反応した。
怪訝な顔をする三春を他所に黒い人影は再び笑い声を洩らす。
繰り返し声を響かせるその様子はまるで、オモチャが壊れた時に鳴るような不協和音だと三春は思った。