咎人の歌
「ふふ……知りたい? どうしても聴きたい?」
「……」
真紅が一歩、三春へ向けて歩を進める。微動だにしないその歩き方に三春は少しずつ後退った。
不思議な威圧感を纏う黒い影は、有無を言わさぬとでも云うような勢いで三春の視界を黒に染めている。
「黙っているなら、それは肯定として受け取るよ三春くん」
ふわりと舞う、優雅な微笑。
美しく整った作り物のような姿が浮かべるそれは、綺麗であると同時に何処か薄気味悪くも三春には思えた。
「……聴いた所で、結局はぐらかされんのがオチだろ」
「とんでもない。これは是非聴いて欲しいな、三春くんの反応も知りたいから」
「俺の反応?」
聞き返す三春を真っ直ぐに眺める鮮やかな赤が上弦の月を描いて、呟く。
「僕はね、君の存在を消しに来たんだ」
背後にある窓から射す陽光が、残酷な言葉すら取り繕って二人しか居ない教室を穏やかに照らしていた。