咎人の歌
「あぁ、ちょっとヘンな夢見ててさ…起こされて良かったわ」
どことなく鈍った身体を持て余しながら、空いた両腕をくんと伸ばして三春はベッドから立ち上がる。
まずは着替えから、と床に散乱したプリントの山を飛び越えてクローゼットを開いた。
寮の部屋は比較的広く取られており、ある程度は散らかしていても十分なほどだ。
三春も浮間もあまり片付けは得意な方でなく、その造りに甘える形で物を置いている。
「そうか、それは何より。…でもなんだよ、変な夢って」
「いやー…変なモンは変なんだって。浮間も同じ夢見たら同じこと言うよ、絶対」
最近伸びてきた黒髪を適当に撫で付け、ワイシャツにネクタイを緩く締める。
そして三春は不思議そうに首を傾げた浮間の肩を叩いて先を促した。
何か言いたそうにしていた浮間も、ズイッと廊下に追いやられれば諦めた様子で小さく笑う。
何時もと何ら変わらない、普段通りの朝だった。