咎人の歌
すぐさま自らの教室に戻った三春は、机に放ってあった鞄から携帯を取り出しアドレス帳を呼び出す。
もしかしたら浮間も同じような目に遭っているのではないか…そう思ったからだ。
「……げっ、圏外…?!」
しかし普段なら何の問題も無く電波が通じている筈の教室、果ては廊下までもが圏外になっていた。
三春は眉を寄せ、愈々深刻になってきている事態に小さな舌打ちを落とす。
どうするべきか、判断の基準は曖昧だった。
もしかしたら、これは単なる臨時休講で今日に限って電波の繋がりが悪いのかもしれない。
別の教室で三春が慌てふためくのを、あらかじめ予想して笑っているのかもしれない。
「……」
それでも三春は妙な胸騒ぎを感じていた。
何か物が胸の中でつっかえているような、もどかしいのに取れない悔しさ。
――寮に戻ろう。
状況を打破する手立ても見つからず、特に実害があるわけではない。
明日になれば、何時ものように挨拶もロクに交わさないクラスメイト逹は戻ってくるだろう。
無理矢理そう決めた三春は、荷物を引ったくるように掴むと扉の方を振り返り……、
其処に立つ黒い影に目を見開いた。