林檎と、キスと。
「わっ、切れそー」
「おっ。耐えた、耐えた。オレって、すげぇかもっ」
ひとりであれこれ言いながら、りんごと格闘してる彼。
そんな彼に、わたしは熱い視線を送る。
“好き”
“大好き”
もしも、この想いに色がついたなら。
もしも、この想いが形となって現れたのなら。
彼に届いたのか、彼が受け止めてくれたのか、わかるのに。
「よしっ、できた」
彼の声で、慌ててテーブルから頬を剥がした。
「お待たせ」
彼が手にしているお皿に視線を移す。
ちょっぴり不格好ではあるけれど、8等分されたりんごは想像していたよりも“それらしい”形に仕上がっていた。