優しい檻
運良く傷は浅かったが、
それから
父は雪依を捨てた。
金銭面のみ援助してくれているが、
あの女と雪依を置いて出ていってしまった。
それ以来、雪依は頼る人が船越以外いなくなったのだ。
船越は女性関係の噂が絶えなかった。
彼の繊細な演奏と、音楽家としては2枚目なので女性ファンも多かった。
―それは雪依が大学に合格してすぐの頃だった。
船越の家のレッスンの日、予定より少し早く着いたが、雪依は彼の家に早目に入った。
こういう時は良くあり、前のレッスンが聞くことが出来たり、練習することも出来た。
しかし、その日は違った。