優しい檻

ホームステイの家に戻り、雪依は五線譜を手にした。
そこには“雪依へ”と書いてあり、船越が雪依に作ってくれた曲だった。

その曲を弾くと、美しく、切ないメロディーだった。
すると、『雪依、来て!早く!』
とここの家主が呼んだ。

『彼の演奏よ。始まるわ』船越がテレビに写っていた。
日本でのコンサートの映像だろう。
『素晴らしいわね。彼のピアノ。ここに住んでた頃から私、ファンなのよ』
「はい、本当に」
久しぶりに聞く彼の演奏。変わらない、音楽。

『雪依、大丈夫?』
家主がハンカチを雪依に渡した。
気付くと頬が濡れていた。

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