優しい檻

雪依の家に船越の妻が来た。

彼女とは船越の家のレッスンで何度か顔を合わせ挨拶もしていた。

「―久しぶりね。少し合わないうちに随分綺麗になったのね。」妻は言った。
「―あの、お話というのは…」
雪依が聞くと、彼女は背筋を正し、

「ここまで来た理由はあなたも分かっていると思うけど」

雪依の反応を待っていた様だが、
「ま、言うわ。彼と今後一切合わないでもらいます。」
「電話と手紙はもしかして…」

妻はため息をつき、

「私だって彼の女好きを知って結婚したんだから、浮気は覚悟していたし、眼をつむってきたわ」



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