優しい檻
「でも、あの人女遊びをしなくなったわ。
―あなたと付き合ってから」
彼女は雪依を敵意に満ちた眼で見た。
「―でも、私、ご家族には迷惑かけているつもりはありません」
雪依が言うと、妻は笑った。
「あんた、良くそんなこと言えるわね。不倫っていう意味分かってるの?!」
彼女の眼が血走っていた。
「一つの家族が失ってしまうことにもなるのよ!その意味分かる?!」
何でこの人はこんなにも取り乱しているのだろう。彼はあんなにも家族を大事にしてきているではないか。
あなたは絶対自分には手の届かない幸せを勝ち取っているのに。
「――あなた、父親に捨てられたんですって?」妻は見下した様に言った。
「だったら、捨てられる子供の気持ち、分かるわよね?」
――ヤメテ、ステナイデ――…
「辞めてよ!」
雪依は叫んだ
「あなたは先生と家庭を持っている。
これ以上の幸せなんてないじゃない!
私は先生が全てなの!!先生は絶対家族を捨てないわ。だからずっと愛人として生きていくって決めたの!」