優しい檻
しばらくして、雪依と俊一は付き合うことになった。
俊一は美大生となった。
一緒にいる時間が少ないから一緒に住もうと俊一は言ってくれたが、雪依は断った。
「お互いの生活のリズムを崩したくないの。
会いたいときに会えるんだもの。今のままで充分幸せよ。」
「何だよ、大人だな~。雪依は。」
俊一は不満そうにしていたが、雪依は一緒に住んで、彼を待ち詫びる生活になってしまったら堪えられないと思ったからだった。
「ね、弾いて。」といつもの様に彼は言った。
俊一にピアノを弾かせることが日課となっていた。そして彼は隣に座り、黙ってその曲を聞き、その後二人で愛し合う。
それから、俊一は雪依の絵を描く。
そんなことが日常となり、毎日が幸せだった。
こんな幸せが来るとは思ってもいなかった。