優しい檻

ホテルのドアを開けると、マルボロの匂いがした。

「遅えよ」



雪依はにっこりと笑う。

「だって、女は支度に時間がかかるものでしょ。それに先週は先生が遅れたじゃない」

「―逢いたかった。先生…」

雪依は船越に抱きついた。

彼は雪依の顔に触れ、キスしてきた。


―それだけで、
もう何も考えられなくなる。




< 6 / 106 >

この作品をシェア

pagetop