優しい檻
「―どうしたの、急に」
「別に、会いたかったから来たんだ。駄目だった?」
「まさか、びっくりしちゃって、―入って。」
俊一が久しぶりに会いに来た。
「―あ、いい匂い」
「丁度、夕飯作ってたところ。食べるでしょ?」
「もちろん、その時間狙ったから」
俊一と会うのはいつ振りだろう。しばらく会ってなかった気がする。
「3週間振りだよ、会ったの」
「―あ、そんなに?忙しかったもんね。学祭の準備で」
「終わったよ、昨日で」
(―あれ、何か…怒ってる…?)
「そう、お疲れ様。どうだった?」
「来てくれると思ってたのに。」
(―そうか、彼女は学祭に行かないといけないんだ…)
「―あ、ごめんね、ちょっとその間忙しくて」
俊一はしばらく黙っていた。
「本当にごめん、俊」
胸が痛んだ。
「いいよ、新しく習い事始めたんだもんね。」
「え…あ、言ってたっけ?」
「パソコン教室だろ?どうなの?順調?」
「―あ、パソコン、」
「どうしたの、難しいの?」
「ううん、全然。ピアノ弾いてるから指動かすの慣れてるから、余裕よ」