優しい檻


「だから、違うでしょう?!どうして分からないの?!全く曲を理解していないじゃない!」
「でも、私はこう感じるんです」

「コンクールで少しでも結果が欲しいなら私の言うことを聞くべきです!」
彼女とのレッスンは平行線だった。自分の思う音楽とは全く違う。

彼女にどう言われようと、雪依は自分の弾きたいように弾くことに決めた。

しばらくして、
俊一が、旅行の日程を決めたい と家に来た。

「悪いけど、しばらく行けそうもないの。」と雪依が言うと、俊一はしばらく無言だった。


「―そんなにアイツがいいの」
俊一が呟いた。

「―え?」

「知ってるんだよ、またアイツと会っているんだろ!」


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