優しい檻

雪依の顔から血の気が引いた。
「―何でだよ、何であんな男忘れられないんだよ!」
「俊、待って、違うの。誤解なの。本当にレッスンに行っているだけなの!」

「じゃあ何で言ってくれなかったんだ!」


「―それは、ごめんなさい、言い出せなくて。でも、信じて!レッスン以外何もしていないの!本当よ!私、このコンクールに懸けてるの!」


―彼に会いに行ったのはコンクールに出ようと決意した翌日だった。
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